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僕の母はいつも父に呼び捨てにされ、怒鳴られ通しで、それでいて一言半句も反抗するでない。お客様の前ですら罵倒され、台所でひとり涙を拭いている。幼い頃から、そんな中で育ってきて、いつしか「ああ、お母さんは可哀想だ。あんなに馬鹿にされて・・・。僕が大きくなったら、きっとお母さんの味方になってやる」と心に誓ってきた。しかし、高校に入るころから考えが少し変わった。それは、「母は本当に馬鹿なんだ。口返事一つもできない。封建的にみえた父こそが可哀想なんだ」と思うようになった。そんな時、母が入院した。馬鹿な母だけにちょっと可哀想にもなり、見舞ってやろうと考え、土曜日に病院に直行した。売店で花を買って、病室に入ろうとして時計を見た。1時半だ。僕は考えた。「まてよ、食事は12時。すると今ごろは午睡の時間だな。するとノックして起こすより黙って入ろう。そして眠っている母の鼻先に花をかざしてやろう。いい香りに包まれて素敵な夢を見るに違いない」と、そっとドアを開けて驚いた。父が来ていた。それどころじゃない。二人はしっかり抱き合ってキスしていたのだ。まったく驚いた。しかしもっと驚いたのは父と母である。二人とも真赤な顔をしてうつむいた。
しばらくして僕は、「お母さんは幸せだなあ」と思った。日頃はあんなに偉そうにしていても、母に病まれて一番ショックを受けているのは父なんだ。僕は今日初めて来たのだが、おそらく父は毎日来て、「母さん、どうだい。ちっとは気分がいいかい。早くよくなってくれよ」なんてやっているにちがいない。考えてみると、あの極端なまでに頑固な親父を、それを何十年も引きつけてきたのは、馬鹿どころか、一見馬鹿にみえる、底しれない人格の深さではなかったか。そう思ったら母から後光がさしているようにすらみえた。僕はドアの側に花を置いて、
「お邪魔しました。お二人、どうぞごゆっくり」
といってそのまま帰った。 |
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上は、ある高校生の作文です。
皆さん、これを読んで、どう感じられたでしょうか。
亭主関白、男尊女卑、けしからん家庭だと感じた方もいるかもしれません。でも私は感激しました。なんと健全な家庭だろう、そしてその子供の受けとり方の素晴らしさ、きっとこの子は口笛でも吹きながら帰ったのではないかと想像するのです。
といって、私は決して亭主関白でいい、女は黙って負けていろ、なんていうのではないのです。ただ私は、「愚か者は駄目だ。賢くなければ駄目だ」という世の中の流れに、ちょっぴり反抗してみただけなのです。
「私は群衆に反抗する。なぜなら群衆を愛する故に」
といった人がいます。とても私には大それたことですが、でも、その気持ちだけは忘れたくないのです。「愚者の徳」というものが、あまりにも無視されつづけている。その時代の流れに、疑問を感じているだけなのです。 |
| (閑院) |
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