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ある町の高い塔の上に、幸福の王子の像が立っていました。王子の体は金箔で覆われ、両目は蒼く輝くサファイア、腰の剣のつかには真っ赤なルビーが輝いていました。立派な王子の像は、見上げる人々を幸福な気持ちにさせ、それは人々の自慢となっていました。
冬も間近なある晩、群れからはくれたツバメが一羽、幸福の王子の足元にとまりました。すると上から大きな水滴がポタリポタリと落ちてきます。見るとそれは、王子の眼からこぼれ落ちた涙でした。「どうして泣いているのですか」とツバメは王子に訊ねました。すると王子が「まだ私が王子として生きていたころ、住んでいた王宮での毎日は、美しく楽しいことばかりで、貧しさや悲しみ苦しみとは無縁のものでした。もしも快楽が幸福だというならば、私は幸福に行き、そして幸福に死んだのです。私が死んでから人々は、この高い場所に私を置きました。そこから見える町の様子は、私が知ることのなかった、貧しさや悲しみ苦しみで溢れていました。ツバメさん、どうか私の体の装飾品を取り出して、町の苦しんでいる人々にあげてくれませんか。私は両足が固定されているので行けないのです。それが悲しいのです。」と答えました。「王子さま、私共ツバメは冬を越すことが出来ません。一刻も早く暖かなエジプトに行かねばなりません。」とツバメは王子の頼みを一度は断りましたが、王子がとても悲しそうな顔をしましたので、心やさしいツバメは、王子の願いを受け入れました。ツバメは王子の代わりとなって、剣のつかのルビーや、両目のサファイアや、全身の金箔を剥がしては困っている人々に配り続けました。町中から感激の声が上がっています。「これで薬が買える」「これで生活が出来る」「これで事業が起こせる」。しかし、彼らの歓声とは裏腹に、王子の姿は日に日にみすぼらしくなっていきました。そんな王子にツバメは言いました。「王子さま、あなたは両目を失って何も見ることができません。だから、私はずっとあなたの側にいて、王子さまの目の代わりになってまいります。」それからと言うもの、ツバメは王子の肩に止まっては、これまで見てきた南国の珍しい話をしたり、町を飛びまわっては人々の生活の様子を王子に伝えました。やがて、空から雪が降ってきました。冬の到来を知ったツバメは死を覚悟しました。どんどん寒さは厳しくなっていきます。それでも、ツバメは王子のもとを離れようとはしません。それは、心から王子のことを愛していたからです。そしてツバメに最後の時がきました。ツバメは残された力を振り絞って王子のもとへいき、「愛しい王子さま、これでお別れです。死は眠りの兄弟だと聞きました。次、目覚めた時も王子さまにお会いしたいです」とささやくと、塔の下に落ちてゆきました。その瞬間、王子の中で何かが砕けたような音がしました。それは、鉛で出来た王子の心臓が二つに割れた音でした。翌朝、その町の市長や市議会議員たちは、幸福の王子を見上げて口々に言いました。「おやおや何てみすぼらしい姿だ。これでは町のシンボルにはならん。おまけに、足元には鳥の死骸まであるではないか。彼らはみすぼらしくなった王子の像を溶鉱炉で溶かし、別の像をつくることにしました。そして「わたしが新しい像のモデルにふさわしい」と争いを始めました。そのころ議会から依頼を受けた鋳造所の監督は困っていました。「おかしいなあ。王子の像が溶けたけど、鉛の心臓だけは溶けないぞ。皆にばれる前に捨ててしまおう。」そう言って、鉛の心臓をごみために捨てました。そこには死んだツバメも横たわっていました。
その様子を天から見ていた神さまが、天使に「町の中で最も貴いものを二つ持ってきなさい」とおっしゃいました。その天使は、迷うことなく鉛の心臓と死んだツバメを神さまのもとに持っていきました。神さまは「よく選んできたね」と天使をほめ、幸福の王子とツバメを神の国に召し入れました。 |
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これは英国の作家、オスカー・ワイルドの『幸福の王子』の概要です。背景にある宗教は違えども、心打たれるものがあります。私の生活や心は、登場人物の誰に近いであろうかと考える時、少しでも「得をしたい」「楽をしたい」「生きていたい」とあくせくしている「市長・市議会議員・監督」の立場であることを自覚せずにはおれません。そんな私であっても「我が名を称えよ。必ず西方の浄土に迎え入れるぞ」と親心を起こし、仏と成って下さった方が、「アミダさま」です。その仏心を法然上人は、「仏は一切衆生を哀れみて、善きをも悪しきをも渡し給えども、善人を見ては悦び、悪人を見ては悲しみたまえるなり」と説いて下さっています。年末にあたり我が身を振り返り、浄土の信仰に会えたわが身を喜び、念仏しましょう。 |
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(住職) |
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